東京高等裁判所 昭和28年(う)4190号 判決
被告人 鈴木弘一
〔抄 録〕
弁護人の論旨第二点について。
訴訟記録並びに当審における事実取調の結果に徴すると、被告人は、(一)、昭和二十四年二月八日東京地方裁判所で窃盗罪により懲役一年(但し四年間執行猶予)に処せられ、(二)、その刑の執行猶予中更に罪を犯し、余罪と共に審理を受け同年九月十九日同裁判所で窃盗罪により懲役一年と同二年の二個の刑を言渡され、(三)、同年十月二十五日右(一)の執行猶予を取消されて服役することとなり、まず右(二)の懲役一年の刑の執行に引続き同(二)の懲役二年の刑(昭和二十七年四月二十八日政令第百十八号減刑令により懲役一年六月に減刑)の執行を受け終り、更に引続き(一)の懲役一年(前記減刑令により懲役九月に減刑)の執行中昭和二十八年五月三十日刑期満了のところ、同二十七年十一月二十二日仮出獄により出所したことが認められる。即ち被告人は本件犯行当時前記(二)の二個の懲役刑の執行は受け終つており、なお本件犯行中昭和二十八年一月二十九日より同年五月二十三日までの犯行(原判決添附の犯罪一覧表中一、二、三、四、五、七の事実)は前記(一)の刑の仮出獄中の犯罪であるが、同年六月以降の各犯行は右(一)の刑の仮出獄の処分が取消されることなく刑期満了した後の犯罪であることが明かである。これによつてこれを見れば、本件犯行当時被告人は二個の懲役刑については全部その刑の執行を受け終つており、なお昭和二十八年六月以降の各犯行当時は三番目に執行を受けた前記(一)の懲役刑についても刑期満了していたものといわなければならない。然しながら前記三個の懲役刑は順次引続き執行を受けていたものであるから、たとえ本件犯行中右三個の懲役刑の執行を受け終つた後の所犯があつても、これについて三犯とし刑法第五十九条を適用する余地のないことは所論のとおりであり、結局本件犯行全部について同法第五十六条、第五十七条を適用して累犯加重すれば足りる筋合である。従つて原判決が三犯として刑法第五十九条を適用したのは、所論のとおり法律の適用を誤つたものといわざるをえない。然しながら、三犯として刑法第五十九条を適用しても結局累犯と同じく同法第五十七条によつて加重され、その刑期が同一であるから、たとえ原判決に誤つて刑法第五十九条を適用した違法があつても、かかる違法は、判決に何等影響を及ぼすものでないから破棄の理由とすることはできない。論旨は理由がない。